プレスリリースTOP -> 2016/6/24 Where have all the months gone? (campai) |
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[ご応募受付期間] 2016年6月24日(金)00:00〜2016年7月31日(日)23:59 | |||||
開発を御担当頂いたåbäke(アバケ)様にお話をお伺いしました。
――「酒器」を製作するにあたりその経緯について教えてください
作品名:Where Have All The Months Gone? (Campai) 私の名前はクワイ・チャン・ケイン。 少林寺拳法のマスターで異母弟のダニー・ケインを探すために19世紀のアメリカ西部を旅している。 自分が1982年から75年で放映されたテレビシリーズの主人公だということは把握していない。 自分への訓練のため、そして社会的責任を意識するために、常に人目を憚りながら行動をしている。 正義と弱き者を守るために繰り返し戦うことになるだろう。 私の名前はフォックス・モルダー。FBI捜査官でXファイル課に所属し、 お蔵入りになった超常現象にまつわる未解決の事件を捜査している。 幼いころにエイリアンに誘拐された―と私は信じている―妹のサマンサをずっと探している。 私が1993年から2002年まで放映されたTVシリーズの主人公の一人かどうかの認識はない。 私は繰り返し、私の妹の失踪とは全く無関係な超常現象の謎を解決することを余儀なくされるだろう。 友人のライアンはしばしば自身が考案した「レジデンシー・サーファーズ」という遊び- 彼の意見によれば、 彼が選ぶキャラクターはいわゆる文脈上のお約束によって必ず邪魔が入る-に耽る。 彼の指摘は正しいかもしれないが、もしケインまたはモルダーが弟や妹をあっという間に見つけていたら、 これらの有名なテレビシリーズはストーリーが複雑になったり迷走したりすることはなくなってしまうであろう。 そして、あの輪島滞在の話。輪島は漆器と漁業で有名な町で、私たちは滞在中に何人もの輪島塗の漆職人たちと邂逅する。 漆は少なくとも6000年前には発見され、丹精を込めて有毒な木の幹から採取した樹液を何カ月もかけて何層にも塗り重ねる、 という技術は遥か昔に既に完成されていた。7人の非常に優れた漆職人が一人ひとり時間をかけて一つのものを完成させる、 という産業システムは現在の産業の発展とは対極的であり、忘れ去られた存在だ。 そして、8人目(あるいは漆器が発展した時代には食洗器が存在しなかったという事実を理解していない人がいるとしたら、 それ以上の人数)は漆器を使う人である。 ここ輪島では町全体が工場としての機能を果たしているものの、 ステレオタイプな煉瓦造りの建物やそびえたつ煙突といったものは存在しない。 その理由は、この街では少量生産が主体で決して100万単位での商品は生産されないからである。 輪島の町の構造はフランスの哲学者フーリエの「ファランステール(phalanstère)」、 協同体住居の思想に近いといえるかもしれない。 ヒエラルキーの頂上に塗師屋が位置し、 彼の元で働く職人たちを家族として彼らの生活を守る。 漆職人は塗師屋経由で顧客からの注文を聞き、塗師屋の元で独占的に働く。 現在でも我々が職人に直接注文をすることは簡単なことではない。 技術としての輪島塗は完ぺきで非の打ちどころが無いが、現在は苛烈な生存競争に直面している。 輪島塗の茶碗の値段はプラスチック製の代替品の100倍だ。 しかしながら、ポイントはそこではない。掌で漆の表面を磨く呂色職人から聞いた話。 「ゴルフ場で指紋が磨滅した指を守る為に両手に手袋をしているのは自分ぐらいだよ」。 それって、すごく興味深い。 一方私はカルフォルニアに住み、元カウボーイで、今は金鉱を探している。 1週間ほど風呂にも入っていないし、ここに来てから7か月金塊は見つかっていない。 とあるバーに入り酒を注文した。 19世紀後半にヨーロッパの金持ちは牡蠣を食していたという話を聞いたことがある。 何百万もの鼻水に似た海中生物「シー・スノット」がこの街の湾岸にいる。 バーテンダーに向かって、 グラス一杯の不味いウィスキーに牡蠣を浸してくれ、と注文した。 輪島の話に戻ることにしよう。漁師と漆器職人は棲み分けが成されている。 双方が集まり酒を酌み交わすことや親交を深めるということはない。 しかしながら 、器の上ではそれぞれの労力は繊細な漆器の上に美しく盛られた旬の魚、というコラボレーションが実現している。 私はロンドンにひっそりと佇む隠れ家的なバーにいる。 そこで世界最高の日本産ウィスキーとイギリス産の牡蠣を木製の酒器に注ぎ入れたものを飲んでいた。 日本人が使うフランス語の「オブジェ(objet)」は必ずしもアート作品という意味ではない。 起源が何であれ、輪島で私たちはその言葉はいかなる機能も持たず、 恐らく愚かしいものを定義づける単語として使われている。 80年代の贅を凝らした漆の装飾はまさにそれを具現したものだ。 かつて平均的なサラリーマンが 毎週末スキーに行くために散財したバブル時代の日本の傲慢さの証しとして、 不格好な裕福さの誇示として、 私たちが輪島で目にした楕円形をした入口の輪島塗の浴室は非常に良い例といえよう。 輪島滞在の後で新しい輪島塗のアイデアに頭を悩ませた結果、漆は天然のニスで、 新しい友人たちによって作られたもの、という結論に至った。さあ、そろそろ次へと進もうではないか。 åbäke 2014 作品制作に携わった7人の輪島塗職は次のとおり: 1/塗師屋: 塩安眞一 2/木地: 垣地政利 3/下地: 坂本雅彦 4/中塗り: 田中聡 5/上塗り: 小坂朗 6/研ぎ: 比田かつみ 7/蒔絵: 大端稔 協力/沖恵美子 ――その後輪島滞在とのことですが、なぜ石川県の輪島に行かれたのでしょうか? 3週間滞在した輪島はいかがでしたか? プロデューサーの沖恵美子から招待されたことがきっかけで、輪島に滞在することになりました。 滞在は想像していたよりも何倍も素晴らしい経験でした。 ――グラフィックデザインだけでなく、音楽や食など異分野で活動されていますが、バラバラの中での共通点があれば教えてください。 私たちにとっては食、音楽、グラフィックデザインはどれも全く同じことなのです。 ――商品についてのこだわりや、完成した際の感想を教えてください。 私たちの意図した通りに、酒器自身がいかに漆のストーリを語るのか、ということに驚かされました。 ――プロデュース沖恵美子さんですが、この商品以外にもÅbäkeと一緒に作られたものなどあれば教えてください。 将来的に色々できたらいいなと思っています。また輪島を訪れて、もっと輪島の町と人たちとのプロジェクトを企画することが大きな夢です。 ――今後の予定や展望、メッセージなどあれば教えてください。 ちょうどヴェネチア・2016年ビエンナーレ国際建築展でアルバニア・パビリオン ( https://www.albanianpavilion.com/2016/en ),の共同キュレーションをしたばかりです。 その他にはブリティッシュ・アートショー( https://britishartshow8.com/artists/abake-na-1543) への参加、 そして、私たちが経営する出版社「 Dent-de-leone」( www.dentdeleone.co.nz) からエキサイティングな新刊が次々と出版予定です。 åbäke
åbäke(アバケ)はロンドンで結成された、4人組のグラフィック集団。彼らの特色は、 デザインの社会的側面を考察し、グラフィックデザインの域をこえたところで活動する。 映像、ダンス、音楽、食や料理などに関わっている。それぞれが独立して活動することも多く、 この作品はスウェーデン出身のカイサ・スタール、フランス育ちのマキ・スズキの 2人によるプロジェクト。なお、2人は2013年11月の3週間を輪島で過ごした。 http://abake.fr |
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